2024年8月18日日曜日

PC用ファンにおける吸気側正面の空間の広さが風速に与える影響

 今使っているPCケース(Define7 Compact)は,フロントの吸気ファンとフロントパネルの間に30mmくらいしか隙間がなく,いかにも吸い込みにくそうな構造となっている。試しにフロントパネルを外すと吸気ファンからの風は強くなるので,確かにパネルが吸気の邪魔をしていることがわかる。このあたりをもう少し定量的に評価するため,まず基礎検証としてファン吸気側の空間の広さがどの程度風速に影響を与えるかを確認し,そのあとDefine7 Compactのフロントパネルの有無でケース内を流れる風の強さ,GPU温度への影響を調べた。


1. ファン吸気側正面の空間の広さが風速に与える影響

 以下の装置は,ファンとファン吸気側正面に壁(写真の発泡スチロール)を配置し,ファンと壁の間の距離を5~100mmまで変化させて,ファン排気側の風速を測定するものである。



 風速測定にはtestoの425を使用した。また,風速ができるだけ一様になるようにファンと風速測定点の距離を離し,申し訳程度だが流路にX字のスリットを配置した(効果は分からん)


 ファンにはFractal Designのケースに付属されているDynamic X2 GP-14 (140mm, 1000RPM)と,DeepCoolのCPUファン用のFC120P (120mm, 1850RPM)を使用した。なお,ファンをこの組み合わせにした理由は特にない。

Dynamic X2 GP-14
FC120P

 以下が測定結果で,横軸がファンと壁の距離,縦軸が風速(1分間の時間平均)となっている。

 今回使用したファンでは,どちらもファンと壁との距離が40~50mmくらいまでは距離が離れるほど風速が強くなり,それ以降は変化が小さくなった。この結果から,これらのファンを使用する場合,ファンの性能を十分引き出したいのであれば最低でも40mm程度ファン正面に空間を開ける必要があることがわかる。


2. Define7Compactでの検証

 Define7Compactのフロントパネルの有無で,ケース排気側の風速がどの程度変わるかを検証した。また,このケースではフロントパネルの側面の吸気用スリットにフィルタがついているので,それを外した時どうなのかも確認した。


フロントファンはNoctuaのNF-A14 PWM。基礎検証で使用したファンと違うのは気にしない。

側面のスリット

 風速の測定は,吸気ファンのすぐ後ろは風速分布に偏りがあり測定しずらいため,写真のようにケース背面の外側で行った。


 以下が結果で,風速はフロントパネルがある状態(Normal)からフィルタを外しただけで約1.3倍,さらにフロントパネルを外すことで1.7倍速くなった。


3. ケース内熱源(GPU)への影響

 上記の風速の違いがケース内の熱源温度にどの程度影響するかを検証するため,影響を確認しやすいGPUの温度を測定した。

 使用したGPUはASUS ProArt RTX4070で,このGPUは内排気型なのでGPUからの排気はケース内に放出される。このため,ケースの排気能力が低いとケース内の温度がどんどん上がってしまう(GPU温度も上がりやすくなる)


 以下は3DMarkのSteel Nomadを10回実行し,10回目のGPU温度の時間平均を計算したもので,フロントパネルなしのほうが2-2.5C温度が下がった。

 また,このときGPUファンスピードもパネルなしのほうが約200RPM下がっており,ファンスピードを抑えつつ温度も低くなっている。


 なお,CPUも同様の検証をしたのだが,フロントパネルの有無でほとんど差がなかった。使っているCPUクーラーは空冷のサイドフローなので,クーラーからの排気をケースのリアファンから適切に排気できていればケース内の温度は上がりにくい。このためフロントファンの状態の影響を受けにくいのだと思われる。






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