2020年12月6日日曜日

サーモグラフィカメラと被写体の放射率

  サーモグラフィカメラは,被写体の表面温度の分布を調べるのに非常に便利な道具だが,その原理を理解していないと間違った測り方をしてしまう可能性がある.サーモグラフィカメラは被写体からの熱放射のエネルギーの大きさを温度に変換しているが,被写体の放射率とカメラに設定した放射率が異なると表示温度と実際の温度にずれが生じるのである.

放射率による温度のずれの検証

 下図のように左半分が銀色塗装,右側が黒皮(酸化被膜)の鋼鈑を被写体用意した.黒皮の放射率は約0.9,銀色塗料は0.3~0.4である.この左右で放射率が違う鋼鈑を裏側からヒーターにより加熱したときの表面温度を,放射率0.9に設定したサーモグラフィカメラで測定した.


 まず,接触式温度計で鋼鈑表面の温度を測定すると80Cとなった.


 次に,サーモグラフィカメラで温度を測定した結果が下図である.前述のとおり,カメラの放射率は0.9に設定している.

 図中のSp1が黒皮面(放射率0.9),Sp2が塗装面(放射率0.3-0.4)の温度である.放射率のカメラの設定値と同じSp1の温度は78.8Cとなり,接触式温度計とほぼ同じ値を示した.これに対して塗装面は50.7Cと接触式温度計に対して30Cも低く,カメラに設定した放射率と被写体の放射率の違いによる誤差が生じた.

 このように,カメラに設定した放射率が被写体と異なる場合,表面温度が正しく測定できないことがわかる.
 もっと専門的な話はこちらが詳しい(放射温度計の話だが基本は同じ)

 なお,今回使用したサーモグラフィカメラは以下の通り.
メーカー:FLIR Systems
型式:FLIR ONE PRO(製品HPリンク
編集ソフト:FLIR Tools


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