2021年7月9日金曜日

スイッチング式 安定化電源装置 HM310 をレビュー

 HANMATEKの安定化電源装置HM310(30V10A)を分解調査した.

 安定化電源装置には大きく分けてシリーズ方式とスイッチング方式がある.両者の違いはニプロンのページが詳しいが,簡単に言うと出力ノイズはシリーズ方式の方が小さく,価格は同容量であればスイッチング方式の方が安価である傾向がある.今回,HANMARTEK社の安定化電源HM310を分解して内部を調査し,部品の交換と出力精度の検証を行った.

まとめ

・筐体は金属を使っており安っぽくはない.ただ表示部は傷がつきやすい.

・内部部品は中国台湾メーカーのものばかりなので電源用コンデンサなどにこだわる人は交換した方が良い.

・出力の調整精度は趣味で使う程度なら問題ない.


1.HANMARTEK

 HANMARTEKはその名前から推察できるように中国深センの企業である.HM310をAmazonで検索すると内部や外観が似た製品が散見され,中国の製品の例にもれずHM310もどこかのOEMに自社のラベルを張っただけの製品だと思われる.


2.HM310の仕様

・入力電源:AC100V

・定格出力:DC30V,10A

・表示部:電圧,電流,電力(それぞれ4桁)

・スイッチ類:主電源スイッチ,出力ON/OFFスイッチ,電圧調節つまみ,電流上限つまみ

・寸法,重量:幅80mm×高150mm×奥行230mm,1.57kg(本体のみ)

・付属品:電源コード,出力側コード(バナナ×ワニ口),取扱説明書


 筐体は表示部に隣接する面がプラスチック,そのほかは鋼板でできている.表示部はアクリルで傷がつきやすい. 


 表示部には4桁の7セグメントLEDが使用されている.

 左下の黒い長方形のものが主電源スイッチで,物理的に回路をON/OFFするタイプで信頼できる.その上の電源マークの白いボタンが出力ON/OFFスイッチで,タクトスイッチとなっている.出力ON時は緑,OFF時は赤に光る.
 電圧・電流の調整つまみはプッシュボタンを内蔵しており,これを押すことで調整する桁を移動できる.が,いちいち押すのが面倒なので微調節ボタンもあった方がよかった.


 背面には60㎜の冷却ファンがついている.

3.内部構造

 筐体のカバーは側面のねじを外すだけで簡単に取り外すことができる.中央の大きな黄色の部品は高周波トランスで,主電源を含む一次側と出力を含む二次側を絶縁している.このトランスの左側にMOSFETトランジスタ2つとショットキーバリアダイオード素子が配置されている.電源用コンデンサは105C品が使われている.

 見た限りMOSFET,コンデンサなどの主要部品は中国・台湾メーカーのものが使われており,日本や欧米の有名どころの部品は見当たらなかった.このあたりでコストダウンしているのだろうか.

 
 MOSFETとショットキーバリアダイオード素子は基盤裏側にある厚さ3㎜のアルミ板のヒートシンクに固定されている.

 
 冷却ファン用のポートは2ピンのものが2つあり,1つはヒートシンクの温度が一定以上になるとDC12Vの電圧がかかる.(同時に出力が強制OFFされる).もう1つは常にDC8Vの電圧がかかっており,ファンを常時回転させたいときはこちらに差し替えればよい. 

 ヒートシンクの温度は下のような温度センサから取得している.

その他基盤を取り外した写真





4.改造と精度の確認

 まず,以下の改造を行った.
・コンデンサをニチコンやルビコン製に変更.
・MOSFETを東芝製に変更.
・ファンを山洋製に変更し,常時動作させるため接続するポートを変更(なぜか付属ファンと電圧のプラスマイナスが逆で困った)
・MOSFETとヒートシンクの間の絶縁シートに熱伝導グリスを塗布.

 次に,精度検証として調節つまみで電圧や電流上限の設定を変更しながらテスターでそれぞれ測定し比較した.

 以下がその結果で,電源側の設定値とテスターの読みの差異は1パーセントを下回っており,家庭用としては十分な精度があると思われる.


 最後に,サーモグラフィで負荷状態の基盤の温度分布を撮影した.MOSFET付近が特に熱くなっていることがわかる.








 









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