Alder Lake CPUがILMから受ける力によって変形する現象をFreeCAD(Calculix)による構造解析で再現した.
1. 解析の前提条件
解析を簡単化にするため,以下を考慮してモデル化や条件設定を行った.
1) CPUが受ける力は,ILMがCPUを押す力と,CPUにより圧縮されたソケットのコンタクトが元に戻ろうとする反発力の2つとする.
2) CPUのIHSとPCBの間の接着剤,およびMBのPCBやバックプレートの影響はモデルが複雑となるためモデル化しない.
3) CPUダイは強度への寄与が他の構造物に比べ無視できる程度に小さいと考えられるためモデル化しない.
また,過去の測定(その1,その2)により次のことがわかっている.
1) ILMがCPUを押す力は589N(ワッシャModなし)
2) CPUがILMで押されることでIHSが反るが,このときIHS上下端と中央の間には隙間ゲージ読みで0.04-0.05mmの高さの差ができた.
2. モデル
モデルはFreeCADで以下のように作成した.なお,CPUのPCBからIHS上面までの高さはIHSとPCBの間の接着剤の厚さを除いた値で,実際は図面よりも0.2mmほど高くなる.
また,IHSとPCBの間にはCPUダイのための隙間を作った(ダイ自体はモデル化しない)
3. 物性
CPUのIHSとPCBの物性を下のように設定した.ただし,実際に採用されている材料の物性は公開されていないので仮定の値となる.
1) IHS
リン脱酸銅(CuP)と仮定.
・ヤング率:118GPa
・ポアソン比:0.33
出典:純銅管のアンモニア環境中における応力腐食割れ試験方法の検討
2) PCB
FR-4規格が使われているらしいので物性の記載がある製品の値を用いた.
・ヤング率:22GPa
・ポアソン比:0.16
なお,解析においてはIHSとPCBの2種類の物性を設定できるように材料ごとにボディを分け,連続したメッシュを切るためBooleanFragmentsでボディを統合した.
4. 境界条件
PCBの裏面に対して,CPUにより圧縮されたソケットのコンタクトが元に戻ろうとする反発力を下のように与えた.この反力には測定で得た589Nを設定した.
また,IHSの左右両端を下のように拘束した.
5. 解析
以上の条件でメッシュを0.5mmで切りinpファイル作成と解析の実行を行ったが,inpファイルの作成に45分もかかった.モデルに複数の材質が含まれるとinpファイルの作成に時間がかかるようだ.これが自分の設定方法かFreeCADかCcalculixによるものかはわからない.解析自体は6スレッドの並列化で2.5分かかった.
6. 結果
解析結果を詳しく調べるため,ポストにはParaViewを用いた.下の図は荷重による変位量の分布で,赤いほど変位が大きい.
また,CPUの上下端とCPU中央の高さの差は0.035mmとなった.隙間ゲージによる測定では0.04-0.05mmの間だったのでそれよりも小さい.この理由として,モデルの材質が実際とは異なることや,CPUとPCBの間の接着剤の層を解析では無視しておりその分強度が上がっていることが挙げられる.
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