2022年2月6日日曜日

intel LGA1700のILMがCPUを押す力は実際どれくらいか

  CPUを押す力が強すぎてCPUが大きく反りやすいと話題のLGA1700ソケットだが,ILMのカムレバーを倒すために必要な力を測定し,ILMが実際どのくらいの力でCPUを押しているのか計算した.

 

 intelのCPUソケットのILM(Independent Loading Mechanism)は,写真のようにカムレバー(手で倒すレバー)でソケットカバーの端部を押さえ,さらにカバー中央の2か所の爪でCPUをソケットピンに押さえつける構造となっている.

 

 ILMがCPUを押す力は,カムレバーを倒す力から以下のように計算できる.

 まず,カムレバーを倒すために押す点(写真左上の赤丸)からカムレバーの軸までの長さが約80mm,カムがソケットカバーを押さえる点からカムレバー軸までの距離が約5mmであるため,ソケットカバーを押さえる力はモーメントの釣り合いから,カムレバーを倒す力の16倍(=80/5)となる.

 次に,ソケットカバーの蝶番からCPUを押さえつける爪までの寸法は約33mm,カムがソケットカバーを押さえる点から蝶番までの寸法が約63mm(33+30)である.これらの寸法から先程と同様モーメントの釣り合いを計算すると,爪がCPUを押す力はカムがソケットカバーを押す力の1.91倍となる.


 最終的にILMがCPUを押す力はカムレバーを倒す力の31倍(16x1.91)となる.

 今回使用したマザーボード(ASUS TUF Gaming Z690-PLUS D4)では,ILMのカムレバーを倒しきるまでに必要をフォースゲージで測定したところ約19N(約1.9kgf)であった.なお,CPUの反り具合はこちらで調査しており大きな反りはなく,本稿作成段階ではいわゆるワッシャーModによるILMの高さ調整は行っていない.

 この測定値と先ほどの計算より,ILMがCPUを押す力は19x31=589N(約60kgf)であることがわかった.そしてこの値はLGA1700の仕様にあるStatic Total Compressive Minimum(最低圧力)534Nより大きく,End of Life Maximum(壊れてしまう圧力?)1068Nよりも小さい.


 また,ワッシャーMODを適用したあと再度カムレバーを倒すのに必要な力を測定した結果,19.5N(約2kgf)となった.MOD適用前より少し値が大きくなっているが,ゲージを手で押さえていると手が震えてゲージ高さが微妙ずれ,計測値が変わってしまうためである.実際はMOD適用前後でカムレバーへの力はほとんど変わっていないと思われる.


 この理由として,カムレバーを倒すのに必要な力が,①カムレバーを倒す力はレバーが倒れていくに従い増加する,②CPUにかかる力が一定以上になるとCPUの反りにより力が逃がされてしまい,レバーを更に倒してもレバーを倒すのに必要な力はそれほど増加しなくなる,という2つの段階で変化するためと推測される(MOD未適用だとCPUの反りにより力が逃がされレバーを倒すのに要る力が緩くなり,MOD適用後とそれほど変わらなくなる?)




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