CPUを押す力が強すぎてCPUが大きく反りやすいと話題のLGA1700ソケットだが,ILMのカムレバーを倒すために必要な力を測定し,ILMが実際どのくらいの力でCPUを押しているのか計算した.
intelのCPUソケットのILM(Independent Loading Mechanism)は,写真のようにカムレバー(手で倒すレバー)でソケットカバーの端部を押さえ,さらにカバー中央の2か所の爪でCPUをソケットピンに押さえつける構造となっている.
ILMがCPUを押す力は,カムレバーを倒す力から以下のように計算できる.
まず,カムレバーを倒すために押す点(写真左上の赤丸)からカムレバーの軸までの長さが約80mm,カムがソケットカバーを押さえる点からカムレバー軸までの距離が約5mmであるため,ソケットカバーを押さえる力はモーメントの釣り合いから,カムレバーを倒す力の16倍(=80/5)となる.
次に,ソケットカバーの蝶番からCPUを押さえつける爪までの寸法は約33mm,カムがソケットカバーを押さえる点から蝶番までの寸法が約63mm(33+30)である.これらの寸法から先程と同様モーメントの釣り合いを計算すると,爪がCPUを押す力はカムがソケットカバーを押す力の1.91倍となる.
最終的にILMがCPUを押す力はカムレバーを倒す力の31倍(16x1.91)となる.
今回使用したマザーボード(ASUS TUF Gaming Z690-PLUS D4)では,ILMのカムレバーを倒しきるまでに必要をフォースゲージで測定したところ約19N(約1.9kgf)であった.なお,CPUの反り具合はこちらで調査しており大きな反りはなく,本稿作成段階ではいわゆるワッシャーModによるILMの高さ調整は行っていない.
この測定値と先ほどの計算より,ILMがCPUを押す力は19x31=589N(約60kgf)であることがわかった.そしてこの値はLGA1700の仕様にあるStatic Total Compressive Minimum(最低圧力)534Nより大きく,End of Life Maximum(壊れてしまう圧力?)1068Nよりも小さい.
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